機本伸司『神様のパズル』

第三回小松左京賞受賞作、つまりはSF作品ということになります。
留年寸前の主人公は担当教授から、不登校の天才飛び級少女・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにと命じられた。苦し紛れに「宇宙は作ることができるのか」という疑問を彼女にぶつけたところ、彼女はゼミに現れた。
「宇宙とは何だろう?」という命題に向けて繰り広げられる議論。正直、物理をかじっていない文系人間には理解に厳しい部分もありますが、科学⊇物理学も、結局は人間とは何かを突き詰めていくものであるという展開に、様々な人間ドラマが交錯します。
こんなことを議論しながら、諸事情(単位の問題)からタンボで農業に従事したり、語り口が頼りないため、テーマは巨大なのにどこかほんわかしている。そこが読みどころでしょうか。絵に描いたような農耕おばあちゃんと、聴講生のおじいちゃんに私は癒されました。
中盤、物語が停滞してしまいますが、最後の五十頁は、ページを捲る手が止まらなくなります。
感情が直接体に訴えてくる。自分が本当にどういう存在なのか、わからなくなりました。
あまりSF臭はしないと思われるので、SFが苦手な方にもお薦めします。
物理学=人間学という話は、私が春に受けた授業(宇宙の科学)でも聞きました。
立花隆『ぼくはこんな本を読んできた』(文春文庫)にもそういう話が出てくるそうです。
(追記)三池崇史監督によって映画化されました。

神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)