2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

フローベール『紋切型辞典』

ここに編まれたおよそ1000の項目は、衣服、飲食物や動植物に関するもの、礼儀作法の規範、身体と病気についての俗説、芸術家、歴史的人物の逸話と彼らの評価など、多岐にわたる。フローベール(1821-80)はその記述に様々な手法を駆使して、当時流布していた…

現代のエンターテイメント小説

【警告】無駄に長く退屈、かつ、ひどい内容ですので、気を付けてください。 いま、私がバイトしてる書店のレジ前では、本屋大賞受賞を記念してかどうかは知らないけど、伊坂幸太郎の著作群が平積みしてあったりするわけです。 んで、店長が『ゴールデン・ス…

吉本隆明『日本語のゆくえ』

日本語における芸術的価値とは何か。現在著者が最も関心を集中している課題を、母校・東工大で「芸術言語論」講義として発表。神話時代の歌謡から近代の小説までを題材に論じ、最後に「いまの若い人たちの詩」を読む。そこで現代に感じたものは"塗りつぶされ…

吉田秋生『河よりも長くゆるやかに』

途中で止まらなくなるくらいの面白さでした。コマに無駄がなく、読みとばしは厳禁なのだけど、すごく濃密で、時にとんでもない笑いを生みだしてくれる漫画だった。二十数年前の男子校を舞台にした、〈女とみればヤリたがり、大麻ときけば吸いたがるニッポン…

ポール・ニザン『アデンアラビア』

大学の図書館で、取り寄せた本書は、黄ばみや日焼けもひどく、多くの人に読まれてきたのだなぁという感慨深し。 〈ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい〉という超有名で印象的な出だしから、がしっと捉まれ…

リュミドラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』

本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカは、1930年代にフランスから帰国した反体制的な芸術家ロベルトに見初められ、結婚する。当局の監視の下で流刑地を移動しながら、貧しくも幸せな生活を送る夫婦。一人娘が大きくなり、ヤーシャという美少女と友達になっ…

金井美恵子『小説論 読まれなくなった小説のために』

大学読書人大賞はA・C・クラーク『幼年期の終わり』(光文社古典新訳文庫)に決定致しました。ノミネート作を見たときは一瞬驚いたけど、蓋を開けてみると穏当な結果で、何も申すこともありますまい。金井美恵子『小説論 読まれなくなった小説のために』(朝日…

川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あっ…

墨谷渉『パワー系181』

第31回すばる文学賞の受賞作。最後まで読ませる筆力はある。文芸評論家の渡部直己が山田詠美のデビュー作『ベットタイムアイズ』を〈色の黒さは百難隠す〉と、つまり、主人公の対象が日本人ではなく黒人であったために成立した物語だと評していたが、それに…