リュミドラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』

本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカは、1930年代にフランスから帰国した反体制的な芸術家ロベルトに見初められ、結婚する。当局の監視の下で流刑地を移動しながら、貧しくも幸せな生活を送る夫婦。一人娘が大きくなり、ヤーシャという美少女と友達になって家に連れてくる。やがて最愛の夫の秘密を知ったソーネチカは…。神の恩寵に包まれた女性の、静謐な一生。幸福な感動をのこす愛の物語。

あ、これこれ。こういうのが海外の小説なのよ。と、読んでいる最中に小説の言葉が私の胸のうちを捕えた。一族とか家族の描写が多く具体的で、奇人変人が出てきて話のメインとなり、描き方がかなり俯瞰的だったりする。
ソーネチカは本の虫で容姿がぱっとしない女性。疎開先の図書館で、当局の監視下におかれている反体制の芸術家・ロベルトと二週間あまりで結婚。流刑地を転々としつつも幸せな生活を送り、ソーネチカは一人の女の子を産む。
以下、話は続いていくのだけれど、色々な人の心を写したいからか、視点がコロコロと変わり、ソーネチカとその周辺の人物が浮き彫りになっていく。
うまく説明できないのだけど、こういう肌ざわりの小説が好きで、ソーネチカがどんなに不幸な状況に置かれても、黙々と食事をするように読んでました。最後の部分は授業中に読んでいて、目にうっすら涙が溜まりました。
裏に翻訳家の柴田元幸さんのレビューがあるが、そこに書かれていることが必要十分で、私の出番なんてこれっぽっちもいらないのだけど、ソーネチカも確かに変わった人で、〈たいていの人間なら激怒し絶望しそうなときでも、(略)「なんて幸せなのだろう」と考えている〉んですよ。
海外小説の特徴として、重要なフレーズがひとつあった場合に、それがここぞというときに繰り返される、ってのもあるかね。

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)