ポール・ニザン『アデンアラビア』

大学の図書館で、取り寄せた本書は、黄ばみや日焼けもひどく、多くの人に読まれてきたのだなぁという感慨深し。
〈ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい〉という超有名で印象的な出だしから、がしっと捉まれた。なんとまぁ、痺れる言葉なの。現代の疲弊した心に多大な効用をもたらす思弁的な言葉の綾たち。
ぼくも二十歳だった。だから、探して読んだのですが、難しかったというか、細部はあまり考えずに読みとばした。
西洋と東洋(Orient) の比較文化論としても秀逸であり、エッセーの枠に閉じ込めておくなんてもっていないのだけど……。
内容はといえば、フランスからアデンへ行き、違いを噛み締め、フランスに戻ってくるだけ。行動についてもあまり語られず、では何が語られるかというと〈ぼくらは、ささやかな日当をくれるという約束で、目下そのための教育を受けている職業にあらかじめ満足しているわけではない、ぼくらは間もなく起ろうとしていたものを恐れていた。これが美しい青年というものだ!〉みたいなことなのだ。
私も美しい青年なのだ! 欝になったときに、青年が読めば癒されるかも。
フランスに失望した青年。本書の邦訳が出たのが1966年。学生運動華やかりし時なのでしょうか。
確かに、これ読んだら闘志が湧いてくるやもしれませんね。
(追記)池澤夏樹個人編集「世界文学全集」の一冊としても新訳がでています。そちらも、載せておきますね。

ポール・ニザン著作集〈1〉アデン アラビア

ポール・ニザン著作集〈1〉アデン アラビア


アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)

アデン、アラビア/名誉の戦場 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-10)