2009-01-01から1年間の記事一覧

津原泰水『ブラバン』

一九八〇年、吹奏楽部に入った僕は、管楽器の群れの中でコントラバスを弾きはじめた。ともに曲をつくり上げる喜びを味わった。忘れられない男女がそこにいた。高校を卒業し、それぞれの道を歩んでゆくうち、いつしか四半世紀が経過していた―。ある日、再結成…

2009年度文芸書以外ベスト5

こんにちは。先日に引き続き、文芸書以外で五冊あげます。 【文芸書以外】第五位難波江和英、内田樹『現代思想のパフォーマンス』(光文社新書)現代思想を代表する6人(ソシュール、バルト、フーコー、レヴィ=ストロース、ラカン、サイード)が取り上げられて…

2009年度文芸書ベスト5

今年読んだ本のなかから印象に残った本を文芸書と文芸書以外(エッセイ含む)で挙げてみたいと思います。【文芸書】第五位三島由紀夫『仮面の告白』(新潮文庫)これがデビュー作だなんて信じられないくらいレベル高い。小説でありながら自伝っぽくもあるのだけ…

内田樹『街場の現代思想』

「バカ組・利口組」に二極化した新しいタイプの階層社会が出現しつつある。そんな格差社会において真に必要な文化資本戦略とは何か?日本の危機を救う「負け犬」論から社内改革の要諦まで、目からウロコの知見を伝授。結婚・離婚・お金・転職の悩み…著者初の…

トーマス・マン『ヴェネツィアに死す』

高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。おりしも当地にはコレ…

鹿島田真希『六〇〇〇度の愛』

女は長崎へと旅立つ。夫と息子をおいて。長崎で青年と出会い、情事を重ねる女。アトピーで背中が被れた青年は純粋で愚か者。名前を知らない彼を女は長崎と名付けた。女には狂気のなかで死んだ兄と兄を溺愛した母がいた。語りえない家族の物語と長崎での自分…

田山花袋『少女病』

自然主義文学の祖、田山花袋の作品です。小説自体は短くて、半分は藤巻徹也氏が高田里穂さんを撮った写真集。文庫サイズだがカバーは厚く、カラー写真満載となれば値段相応なのかなというかんじ。 主人公は三十七歳の売れない作家で雑誌社で編集をしているぶ…

喜多ふあり『けちゃっぷ』

引きこもり女子HIROは全く口をきかないが、人と話す時は携帯から、言いたいことをブログにアップして爆裂トーク。血でもない、ケチャップでもない、「血のり=けちゃっぷ」のようなバーチャルな現代に迫る、驚愕すべき才能の誕生。 昨年の文藝賞受賞作。人と…

ディヴィッド・アーモンド『肩胛骨は翼のなごり』

引っ越してきたばかりの家。古びたガレージの暗い陰で、ぼくは彼をみつけた。ほこりまみれでやせおとろえ、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。アスピリンやテイクアウトの中華料理、虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む。誰も知らない不可思議な…

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で六歳の梢に十七歳の梢が侵入。真相の探究は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死。魂を奪われた少女たちと梢を苛む闇の男。真実なんて天井にぶら下がったミラーボール。眩い…

デイヴィッド・アーモンド『ヘヴン・アイズ』

自由を求めて孤児院を抜け出し、筏に乗り込んだ3人の子どもたち。川を下ってたどり着いたのは、真っ黒な泥が広がるブラック・ミドゥン。そこには、両手に水かきのある女の子と奇妙な老人が、二人きりで暮らしていた。黒い黒いその泥のなかには、たくさんの秘…

パウロ・コエーリョ『11分間』

「むかし、あるところに、マーリアという名の売春婦がいた」。マーリアは、ブラジルの田舎町に育った美しい娘。恋愛に失望し、スイスの歓楽街で売春婦をして暮らしている。セックスによる陶酔など一度も味わうこともなく、日記帳だけに心を打ち明ける毎日。…

山崎ナオコーラ『論理と感性は相反しない』

神田川歩美、矢野マユミズ、真野秀雄、アンモナイト、宇宙、埼玉、ボルヘス、武藤くん。神田川(24歳、会社員)と矢野(28歳、小説家)の2人を中心に、登場人物がオーバーラップする小説集。「小説」の可能性を無限に拡げる全15編。 短編集である。帯には〈これ…

私に影響を与えた新書。

高校時代、国語の授業で各人が新書を持ってきて、先生が書名を言いながらまわっていくという説明しずらいコーナー(?)があったのですが、当時はいまみたいに種類は豊富でないにしろ色々な新書に触れることができました。そこで、高校時代に読んだ新書のなか…