舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で六歳の梢に十七歳の梢が侵入。真相の探究は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死。魂を奪われた少女たちと梢を苛む闇の男。真実なんて天井にぶら下がったミラーボール。眩い光にダンスを止めるな。踊り続けろ水曜日。「新潮」掲載に1050枚の書き下ろしを加えた、渾身の長篇小説。

舞城すげえなあとんでもないところまで読者連れてってくれるなあというのがとりあえずの感想である。上下巻、千ページを越えるボリュームは実物を手に取っていただければわかるように重量感もばっちり。本書には質、量ともに十二分な不可解な謎が詰まっている。正直、私みたいな凡人には理解できないというかわからない箇所ばかりなのですが、それでも舞城さんが「すごい」ということは実感できる小説です。本格というより後半は特に宇宙論なども提出されバリバリのSF風味に。この世界観に耐えられるかどうかという点では読者を選ぶ小説かな。
物語としては迷子探し専門の探偵、ディスコ・ウエンズデイが福井県西暁町のパインハウスで起こった、作家三田村三郎死亡事件と、この事件のために集められた名探偵達の推理合戦にひょんなことから巻き込まれる。ディスコはある事件で救った梢という少女と同居していて。これくらいにしておきますが、推理のオンパレードは純粋に楽しいです。物語の構成上、推理しないわけにはいかないのですが。ただ、途中からものすごくややこしくなって頭がこんがること必死。間違いなく傑作なのだけど、こういうの苦手な人はたくさんいそう。私はわからないけど好きです。
福井県西暁町といえば舞城文学おなじみ。本書を読む前に私は『世界は密室でできている。』(講談社文庫)と『阿修羅ガール』(新潮文庫)を読んでいたのですが、『九十九十九』(講談社文庫)も読んでたほうがよかったかなって思いました。清涼院流水のJDCトリビュート小説なんですけど、とにかくディスコは初めて読む人向けではないですので、初めてのかたは『世界は密室でできている。』あたりから読まれることをおすすめします。本書でも顔をだすルンババが主要人物のおはなし。それにしてもディスコの世界観は比類ないほど素晴らしい。
なんかあんまり凄さを説明できてないですが、傑作ですよ。名探偵の名前がおもしろい。猫猫にゃんにゃんにゃんとか豆源とか本郷タケシタケシとか笑える。あと美神ニ瑠主くんがかわいいのよー。きゃっきゃっ。忘れてました。物語もすんごいですが、なんといってもリズミカルな文体がすごいん。フォントを変えたりして強調するのはあまり感心しないけれども、読みやすいというかすたたたたあと流れていくような文章はそれだけで快感なんである。恐るべし舞城。今作がひとつの到達点にして集大成であるなら、今後どのような世界まで我々読者を連れていってくれるのか楽しみなのだー。

ディスコ探偵水曜日〈上〉

ディスコ探偵水曜日〈上〉


ディスコ探偵水曜日〈下〉

ディスコ探偵水曜日〈下〉