吉田秋生『河よりも長くゆるやかに』

途中で止まらなくなるくらいの面白さでした。
コマに無駄がなく、読みとばしは厳禁なのだけど、すごく濃密で、時にとんでもない笑いを生みだしてくれる漫画だった。

二十数年前の男子校を舞台にした、〈女とみればヤリたがり、大麻ときけば吸いたがるニッポンの高校生〉を描いた青春もので、米軍基地などが展開上、大きな役割を担ってくるところを始めとして、物語的にもしっかりとしたものになっている。
一話と二話の時系列が逆転していたり、伏線を存分に使いきっているところなど、構成がよく考えられています。漫画独自の、手法にも感心させられるんだね。

が、笑いを作るのは細部であり、少女漫画(らしい)にしては、内容からして、お下劣な話にもなるが、高校生男子としては極めてリアリスティックに見えてしまう。
彼女がいるのに、男の子に弾かれたり(!)、バーでバイトして草は売るし、ドラマとしての複雑な家庭事情はあるのだけど、根幹にあるのは純粋なまでの「欲求」で。

いいないいな人間っていいな

日本昔はなしの歌を思い出してしまった。
あと、唐突に先輩が「オランダとか合法の国でやらんかったら、そいつ偽善でしょ」って言ってたのも思い出しました。

人間は欲望の塊や!
年とともに氷解していくのかもしれないけど、だからこそ私なんかは若さに執着するのかもしれない。自分の言ってること、自分でも理解不能。

河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)

河よりも長くゆるやかに (小学館文庫)