ジョナサン・カラー『文学理論』

平易でわかりやすい文学理論入門書。本書の特徴は、文学理論の流派を歴史や人物で区分するのではなく、各流派に共通するトピックについて述べることで文学研究もとい文学理論に触れている。

1 理論とは何か?
<理論というのは名前(ほとんどが外国人の名前)の寄せ集めではないか>という疑問から出発し、<theoryは単なる仮説以上のものでなければならないが、自明のことであってはならない>ことを会話でのtheoryの使い方を例に挙げて説明する。つまり単純すぎるのはダメで複雑じゃないと理論にならないのだ。
理論は<本来無関係の分野にまで刺激を与えたり、新たな思想上の方向づけをしたりするような著作を指すように>なった。<文学研究の分野以外の著作が文学研究にたずさわる人々によって取り上げられるようになったのは、言語や精神や歴史や文化を分析するその方法が、テクストや文化に関する問題を新しい方向からきちんと説明してくれると考えたからである>。要するに、文学以外の分野(政治思想、ジェンダーetc.)が文学研究に有益な示唆を与えてくれたということである。
<理論の第一の効果は「常識」に異議を唱えることである>。<理論とはしばしば常識的な考え方に対する挑戦的な批判であり(中略)文学研究の最も基本的な前提や了解事項に疑問をつきつけ、自明とされてきたことに揺さぶりをかける>。
ここで著者は理論の例としてフーコーデリダについての事例を挙げる。

「性」とは自然な何かが抑圧されたものではなく、十九世紀にひとつに結びつくさまざまの社会的慣習、調査、話、著述――要するに、「言説」とか「言説の実践」――によって産出された複雑な観念だということである。

つづきは後日。