村上征勝『シェークスピアは誰ですか?』

古くから文学作品などの著者をめぐる謎は尽きないが、文章の数量的な分析から著者を割り出すことに画期的な成果を上げているのが、近年の計量文献学である。『新約聖書』のパウロの書簡は本当にパウロが書いたのか。シェークスピアの正体は?『源氏物語』の「宇治十帖」の作者は紫式部ではなかった?プラトンの書簡や『紅楼夢』、『静かなドン』をめぐる疑惑、川端康成の文体の変化、パトリシア・ハースト誘拐事件から「かい人21面相」に至るまで、本書は「文章の指紋」を検証する計量分析の手法で様々な謎をあばく。

どうなんでしょうね、この本は、と思わせる点があったのでそこを中心に話を進めます。
まず、第一に文章を数量的分析を行なうことによって新たな知見を得ようとする計量文献学の性質上、仕方がないのかもしれないのだが、これら本書で扱われている分析だけで“断定”することはできないのだ。よって、シェークスピアはもちろんのこと、他の議題に関しても、ほとんど知見を提出できていないのだ。タイトルだけを見た人は絶対後悔するだろうな。
もうひとつは、数量的にアプローチする以上、多少は理系チックな数式が登場することでしょうか。著者もそのことは心得ているらしく、この手の新書(類書) がそうするように、数式を柔らかに語っておるように思われますし、微妙に避けている節もあります。これを読んだ読者は何が出来るのか。まぁ、こんな研究もあるのか、あたりで終わるのではないでしょうか。
そう思わせる分、ボーダーラインは突破している手堅い本だとは思います。
私は無知で無自覚な人間なので、ふーん、で終わりました。すいません、村上さん。

シェークスピアは誰ですか?―計量文献学の世界 (文春新書)

シェークスピアは誰ですか?―計量文献学の世界 (文春新書)