角田光代『予定日はジミー・ペイジ』

出産にはいくつものストーリーがあり、悩みと笑い、迷いと決定が詰まっているのだろう。だめ妊婦、ばんざい! 天才ロックギタリストの誕生日に母親になる予定の「私」をめぐる、切ないマタニティ日記。

前に本屋で見たときは、エッセイかと思い違いをしていたのですが、小説でした。
ちなみに、角田さんは妊娠しておりません。
夫と性交して妊娠し、子供が産まれる前までを描いた書き下ろし小説です。
日記形式で、子供のことを色々考えたり、母親学級なるものに参加してみたり、はたまた昔の恋人に逢ったりする主人公を軸に、女性のみが体験する「妊娠」という行為を神格化することなく書かれているので、好感を持てました。
好きでもないのに、夫となんとなく結婚しているという設定が、むしろ物語を安定させているような気がする。無邪気に描かれる夫なのですが、「女から見れば男なんて無邪気なもんよ、ふふん」ってな台詞が行間からでてきそうで。
ひとつひとつの挿話も見事ですし、男性こそ読んでみるべしですよ。

予定日はジミー・ペイジ

予定日はジミー・ペイジ