田中克彦『ことばとは何か』

ことばが初めから完璧なものなら、それは変わらないし多様な形をとることもないはずだ。しかし実際には時間とともに姿を変えるし、地上には何千種類ものことばがある。社会規範に取り込まれながらも逸脱してゆく。このとらえどころのない対象に十九世紀言語学は生物学のように接近し、二十世紀構造主義はことばの変化に目をつぶったが実はこの変化にこそ本質があるのではないか。ことばを、自らの意思を持たない自然の性質と同時に、技術といった文化的性質をあわせもつものととらえ、当面する言語問題について考える。

言語学史から言語に関する考え方を俯瞰し、言語と国家についての関係について述べる。ソシュールの考え方はデュルケムの社会学によってるとか個別の議論は別にして読者を選ぶ本なのかなと思いました。
言語学は他の人文科学と違って、音声学を中心に自然科学を目指しました。記号論のベースにもなった言語とは、どういった風にとらえられてきたのか?
ことばを考えてみるいい機会になりました。読みやすいですが、精読しないとわかりにくい部分もあります。もっとじっくり読むべきだったかも。
(追記)私が読んだのはちくま新書のものですが絶版となっており、同内容のものが講談社学術文庫から再販されています。

ことばとは何か  言語学という冒険 (講談社学術文庫)

ことばとは何か 言語学という冒険 (講談社学術文庫)