絲山秋子『袋小路の男』

高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「小田切孝の言い分」「アーリオ オーリオ」を収録。

一日で読み終えました。
三篇からなる短篇集で、「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」はある男女の恋愛における微妙な関係をそれぞれ一人称、三人称の形で書きわけたものです。一方の「アーリオ オーリオ」は中年の清掃工員と中学生の姪との文通を描いた心温まる物語。
初めて絲山作品を読みましたが、さらりと読めて上手いです。描写が簡潔で無駄がなく、読者は行間から立ちのぼる様々な思いをひしひしと味わいながら、色々なことに納得したり、はたと気づくことがあったりして濃厚な時間を過ごすことができる。そういう小説でした。

袋小路の男 (講談社文庫)

袋小路の男 (講談社文庫)