笹生陽子『ぼくは悪党になりたい』

時代をうまく表現している作品だと思った。出版されたのは2004年6月。草食系ということばが定着する以前に自分を草食獣に例える主人公兎丸エイジ。美男子の友人羊谷とバーガーショップでだべっている場面からこの物語ははじめる。名前も温厚そのもの。

父親がいなくて、母と異父弟のヒロトと暮らしている17歳のいたってふつうな主人公エイジ。母が海外出張中で修学旅行に行く直前に弟が熱をだして倒れる。それを契機にエイジの周囲で変化が起こってくる。

イマドキのなんとなく毎日を過ごしている高校生の日常がよーく描けている。日常だけじゃストーリーにならないので出生の秘密をはじめとしたお約束を随所にちりばめているのですが、軽妙かつ巧妙で違和感がなく読ませるのだ。とにかく精度が違います。文章のセンスとか構成とかどれをとってもピカイチ。

女性にしか書けない少年の繊細さだと思いました。
主人公のテキトーさ加減と家事をすべてやってるギャップがたまらない。一文が短いのでテンポ良くすらすら読めます。朝読なんかにはおすすめ。爽快青春エンターテイメントです。

ぼくは悪党になりたい (角川文庫)

ぼくは悪党になりたい (角川文庫)