古屋×乙一×兎丸『少年少女漂流記』

僕はみんなと同じようにうまくやれているだろうか? このままちゃんと大人になれるのだろうか? 友情、恋愛、容姿、不登校、家族…抱えきれない不安と過剰な自意識にさいなまれて、少年少女たちは非日常の別世界に迷い込む。妄想か、現実か。漂う彼らが行き着くのはどこなのか。古屋兎丸乙一、二人の鬼才が鮮烈に描き出す揺らぐ10代の心模様。ひたむきでちょっぴり痛い青春物語の傑作。

作家乙一と漫画家古屋兎丸による合作。乙一がシナリオを書いて古屋兎丸が絵にした短編集です。

蟻を飼育している男、ダイエットして痩せた女、友人のいない学級委員などフェティッシュな人物を執拗なまでに描ききっている。正直言って本気度に負けました。

主人公は十代の少年少女。どのはなしも現実世界で葛藤を抱える主人公達の妄想が爆発しているのが特徴である。青春特有の痛々しさが随所に溢れているのだけど、グロテスクなセンスがさらに追い打ちをかける。
巻末には両者の対談が納められ、二人が似たもの同士なんだなーということが実感できる内容となっております。体験談が色濃く作品に反映されているみたいなのでファンにはたまらんかも。

現実と妄想がごっちゃになってるから理解できないところもあるけど気にしなくていいんだよ。青春のうっぷんを肯定してくれる明るいんだか暗いんだかわからん漫画でした。否、確実に暗いがな。オマージュ精神も健在で得もいえぬ感覚を楽しめます。
こういうのが好きな人は、古屋兎丸氏がマンガ・エロティクス・エフに連載している『インノサン少年十字軍』もおすすめ。無垢な少年を待ち受けている運命はあまりにも残酷だったというおはなしです。

少年少女漂流記 (集英社文庫)

少年少女漂流記 (集英社文庫)