山岡義典編『NPO実践講座2』

副題は「人を活かす組織とは」。NPO法人の運営に携わっている方が、法人設立の経緯や事業内容、運営方法などを綴った本。
いわゆる体験談なので読みやすくNPOを立ち上げようと考えている人にとっては参考になるところも多い。
第一章は総論。企業との違いやNPOの形態について述べられる。世間型組織の人間関係は「縁」「恩」「情」を大切にし、市民型組織の人間関係は「信」「義」「愛」を大切にするという著者の主張は興味深い。現在は<世間型組織の特徴を土台にしながら、市民型の特徴が次第に強くなりつつある>そうです。
第二章から第五章までは、各事例の報告が続きます。第二章は行徳野鳥観察舎友の会の東良一氏。組織にとって人が最大の財産であり、ボランティアでやるという意識ではなく、各人がやりたいことをやる場がNPOであると。ボランティアが中心のNPOであっても、自分のやりたいことがあるから参加しているという気持ちを持ってほしいわけですね。第二章では毎日現場で働いている専従職員とメンバーとの情報共有や意思疎通の大切さについても触れられてます。組織が大きくなると各部署の意思疎通が重要になってくるのは当然で、このあたりは企業とあまり変わらないかもしれません。ただ、NPOには多様な関わり方があるため随時ミーティングの場を設けているということは第三章以降の執筆者のかたも述べておられます。
第三章は八王子子ども劇場の浅野里惠子氏。子どものための芸術鑑賞を活動の中心として始めた八王子子ども劇場は、子育て支援や子ども自身によるイベントの企画立案など活動領域を拡大しつつ地域に根差した活動を行っています。本章では会員の概念が問われてる。正会員、活動会員、支援会員という枠組みのなかで子どもにも議決権を持たせるべきか、支援会員にも鑑賞の場を与えるべきではないかといった問題が表面化してくるわけですね。<自分の居場所を見つけて、そこから自分たちで何かをつくりたい>というのが会員という主張は第二章の積極性が求められる点に似ている。サポーターも担い手も参加者には変わりはないということです。
第四章はリベラルヒューマンサポート三好悠久彦氏。前身となる有限会社三島総合心理研究所ではカウンセリングや相談活動を主に行っていたそうです。現組織では不登校生徒のためのフリースクール「リベラスコーレ」や障害を持った人が働く作業所などの施設による実践的な社会復帰の場での教育を中心に教育、医療、福祉、労働にまたがる問題に取り組んでおります。専門的な知識を持った有給スタッフが運営にあたっているのが特徴でもあります。
NPO=非営利組織=無償というイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれません。NPOにはさまざまな形態があります。そこが企業との違いでありおもしろい部分なのです。
第五章は建築技術支援協会の米田雅子氏。建築技術の技を後世に継承していくため退職技術者を中心としてが教育普及、情報発信、調査業務などに携わっている団体である。建築業界のなかでも専門の異なる技術者が意見を交換することには双方にとって利益をもたらすそうだ。技術の補完である。技術、個性、能力を活かす組織作りや馴れ合いを避け評価を率直に受けとめるといったポイントはまさに経営論。NPOにマネジメントが必要ないというのは誤解です。NPOも組織である以上、経営管理はとても重要な要素になってきます。米田氏が最後に触れられている退職者の生きがいとしてNPOという考え方は一種の方向性を示しているようにも見えました。
第六章は日本国際ボランティアセンター清水俊弘氏。国際協力団体として難民救助支援を行っていた団体です。当人たちの真摯なまでの思いが伝わってきました。政治的援助の限界を感じ、政策提言をにも力点をおいてるNPOです。現場とのギャップを埋めるためにも、コミュニケーション能力は重要になってくることは間違いない。<「なぜ自分はここにいるのか」という立脚点、出発点を、どのくらい明確にもっているのか>によって、自分の立場を明らかにしていくことがより良い組織にしていくためには求められているのだ。
第七章は特論として介護保険参入による介護系NPOについて。組織経営との関連性から筆者は運動性と事業性のバランスが大切だとの結論に至る。私もこの意見には賛同します。非営利活動の概念を<公益的な「ボランタリー活動(自発的な活動)=市民活動」>と定義することによって無償とか有償が大事なのではなくなってくる。要はどういった活動を行うのか。企業や行政が出来ないことをやるからこそ、NPOの存在意義があるのではないかと私は思います。

NPO実践講座〈2〉人を活かす組織とは

NPO実践講座〈2〉人を活かす組織とは