羽田圭介『不思議の国のペニス』

男子校1年の遠藤は自称“エロセレブ”。2つ歳上の女とSMならぬSS関係を続けるが…。“エロ”から始まり、“ラブ”に落ちた、ぼくとナオミの恋の行方。逆走する純愛小説の傑作。『黒冷水』の著者が贈る文藝賞受賞第一作。

男子高校生の生態ならぬ性態が描かれている青春小説です。
主人公は青春小説お得意のスカした野郎で、彼女とSSプレイを行っている。
童貞達の下ネタ談義満載にもかかわらず、あんまり楽しめななかった。
唐突に出てくるエロセレブという単語の必然性がわからないっす。
男子校特有の空気なのかねー。文章は読みやすいけど登場人物多すぎてわかりにくす。
地名はほぼ実名なのに、秋葉原だけAという記号で表象していたのも気にかかる。
あまり活きていないような。秋葉原文学と言っていいのか。なんか引っかかるのである。
後半、彼女に気に入られようと主人公たちは文化祭でロックバンドを結成しライブを行います。
ベタなのはご愛敬だとしても、取ってつけた感は否めなくて。なんでいきなりバンドなんだ。
たしかに高校生っぽいけども。そのへんを楽しめないとつらいです。読者を選ぶ小説だと感じました。
否定的なことばかり書きましたがアイデアは良いのですよー。
SSという着想や性行為に至らないという関係などは現代的だし、空バンド(エアギターならぬエアバンド)というアイデアはなかなかだと思います。ロックバンドのオリジナル曲もバカバカしくて良かった。もっとうまく活かせなかったのかなー。
男子高校生をリアルに書こうとすると薄っぺらくなるのかもしれませんが。
それなら思い切って完全にエンタメ路線で行ってほしかった。
青春小説と恋愛小説の狭間で揺れる中途半端さが逆に初々しくもあり安心できる小説ではありました。
タイトルに惹かれて数年前購入した本。
文藝賞受賞作『黒冷水』がツボだっただけにハードルが上がってしまったのかな。

不思議の国のペニス

不思議の国のペニス