斎藤美奈子『文学的商品学』

本屋で以前、立ち読みしていたのですが、文庫になったので購入しました。
もう、ステキ。読者の視点から容赦なく精緻に語る斎藤節は本書でも健在です。

青春小説、風俗小説、ホテル小説など、各ジャンルの個々の作品の具体的な「モノ」の描写から、商品である小説を成り立たせる要素を一般化するという作業を斎藤氏は、いとも簡単に、愉快な面持ちを文章に滲ませながら、行なってます。
でも、簡単な作業ではないはず。引用箇所だって、何度も本を読み込んで、特徴が明確な部分を、簡潔に示すのは到底容易なことではないからだ。

例えば、バンド文学のくだり。元祖バンド文学は音をださずに、練習の雰囲気を音として伝えたことを、当時の文学作品から例文をだし、「歌詞が音楽だ」という法則を発見します。そして、歌詞でも表現の方法として、言語表現に着目し、オノマトペ(擬音語)や「」(かっこ)の持つ効果を常識と照らし合わせて、新たな見方・読み方を提唱するのです。

やっぱり、読書とはこういうものでなくっちゃね。
斎藤ウォッチャーな私ですが、書評集なら『誤読日記』(朝日出版社)をお勧めします。また、『文章読本さん江』(ちくま文庫)は、数々の文章読本相手に真っ向から勝負を挑んだ大変濃い文章読本「本」です。

文学的商品学 (文春文庫)

文学的商品学 (文春文庫)