池田清彦『科学とオカルト』

科学の本質と歴史を裏側からあぶりだす! 社会、科学、オカルト。この3つにはどんな関係があるのか? 客観的な科学の登場は、たかだか数百年前のことである。科学史の視点から、科学の本質を探る論考。

個人的には久々のヒットです。
専門書ではなく一般の人向けに書かれたとはいっても小説なんかに比べると読みにくいのが、こういった類の書の常ですが、題材が題材だけあって読みやすい。
科学はオカルトを大衆化したものである、という意見をはじめとして、無知でかつろくに知りもしない定説に何の疑問も抱かない私なんかが読むと目から鱗が軽く百枚くらい剥がれ落ちます。大文字版でかつ薄いので、おすすめです。
客観性と再現性を担保とすることで公共性を獲得した科学。著者はこれを、ターレスらギリシャ自然哲学及び、ニュートン以前のオカルト(ガリレオ等も含む)と比較しながら、当時の社会のありかたについても語っています。科学主義は西洋が推し進めていったものですが、西洋社会に色濃くたちのぼるのはキリスト教の影であり影響力でしょう。当たり前のことでしょうが、絵画や詩の世界だけではなく学問の世界までもが教義を参照せざるをえないという社会は、楽といえば楽なんでしょうが自由がないななんて思ってみたり。

科学とオカルト (講談社学術文庫)

科学とオカルト (講談社学術文庫)