読書

喜多ふあり『けちゃっぷ』

引きこもり女子HIROは全く口をきかないが、人と話す時は携帯から、言いたいことをブログにアップして爆裂トーク。血でもない、ケチャップでもない、「血のり=けちゃっぷ」のようなバーチャルな現代に迫る、驚愕すべき才能の誕生。 昨年の文藝賞受賞作。人と…

ディヴィッド・アーモンド『肩胛骨は翼のなごり』

引っ越してきたばかりの家。古びたガレージの暗い陰で、ぼくは彼をみつけた。ほこりまみれでやせおとろえ、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。アスピリンやテイクアウトの中華料理、虫の死骸を食べ、ブラウンエールを飲む。誰も知らない不可思議な…

舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』

迷子捜し専門のアメリカ人探偵ディスコ・ウェンズデイの目の前で六歳の梢に十七歳の梢が侵入。真相の探究は全てを破滅へと誘う。謎の渦巻く円い館と名探偵の連続死。魂を奪われた少女たちと梢を苛む闇の男。真実なんて天井にぶら下がったミラーボール。眩い…

デイヴィッド・アーモンド『ヘヴン・アイズ』

自由を求めて孤児院を抜け出し、筏に乗り込んだ3人の子どもたち。川を下ってたどり着いたのは、真っ黒な泥が広がるブラック・ミドゥン。そこには、両手に水かきのある女の子と奇妙な老人が、二人きりで暮らしていた。黒い黒いその泥のなかには、たくさんの秘…

パウロ・コエーリョ『11分間』

「むかし、あるところに、マーリアという名の売春婦がいた」。マーリアは、ブラジルの田舎町に育った美しい娘。恋愛に失望し、スイスの歓楽街で売春婦をして暮らしている。セックスによる陶酔など一度も味わうこともなく、日記帳だけに心を打ち明ける毎日。…

山崎ナオコーラ『論理と感性は相反しない』

神田川歩美、矢野マユミズ、真野秀雄、アンモナイト、宇宙、埼玉、ボルヘス、武藤くん。神田川(24歳、会社員)と矢野(28歳、小説家)の2人を中心に、登場人物がオーバーラップする小説集。「小説」の可能性を無限に拡げる全15編。 短編集である。帯には〈これ…

絲山秋子『袋小路の男』

高校の先輩、小田切孝に出会ったその時から、大谷日向子の思いは募っていった。大学に進学して、社会人になっても、指さえ触れることもなく、ただ思い続けた12年。それでも日向子の気持ちが、離れることはなかった。川端康成文学賞を受賞した表題作の他、「…

田中克彦『ことばとは何か』

ことばが初めから完璧なものなら、それは変わらないし多様な形をとることもないはずだ。しかし実際には時間とともに姿を変えるし、地上には何千種類ものことばがある。社会規範に取り込まれながらも逸脱してゆく。このとらえどころのない対象に十九世紀言語…

いとうせいこう『ノーライフキング』

小学生の間で空前のブームとなっているゲームソフト「ライフキング」。ある日、そのソフトを巡る不思議な噂が子供たちの情報網を流れ始めた。呪われた世界を救うため、学校で、塾で、子供たちの戦いが始まる。そして最後に彼らが見た「キング」の正体とは?発…

あさのあつこ『The MANZAI(4)』

うちな、ちょっと瀬田くんに相談したいことあって。あのな、恋についてなんやけど…。憧れの美少女・メグに言われた歩は、「現実はそんなに甘くない」と思いながらも、内心ドキドキ。ついに、歩の“恋路”に進展があるのか!?ボケの貴史とツッコミの歩―我らが「…

ローベルト・ムージル『寄宿生テルレスの混乱』

お金を盗んだ美少年バジーニが、同級生に罰としていじめられている。傍観していたテルレスは、ある日突然、性的衝動に襲われる…。寄宿学校を舞台に、言葉ではうまく表わしきれない思春期の少年たちの、心理と意識の揺れを描いた、『特性のない男』ムージルの…

池田清彦『科学とオカルト』

科学の本質と歴史を裏側からあぶりだす! 社会、科学、オカルト。この3つにはどんな関係があるのか? 客観的な科学の登場は、たかだか数百年前のことである。科学史の視点から、科学の本質を探る論考。 個人的には久々のヒットです。専門書ではなく一般の人…

ジョセフ・メイザー『数学と論理をめぐる不思議な冒険』

ユークリッドからカントール、ゲーデルまで、数理論理学に関わった数学者を中心とした話題を提供する読み物です。幾何学、解析学、代数学、確率、などの幅広い分野に題材を取り、それらと数理論理学との関わりを通して、数学のさまざまな分野の魅力を知らし…

鹿島田真希『一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する』

奇蹟をめぐる5つの“聖なる愚者の物語”。“楽園”を追われた子どもたちの魂の放浪…。連載時より各紙誌で絶賛された、文芸賞作家による話題の連作小説。 夜中に実家へと帰るための準備をしていて、それと同時平行で本書を読んでました。前日(当日?)にならないと…

角田光代『八日目の蝉』

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか−−理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。 またしても早朝に本を読んだ。昨年発売されてとびきり評判が良かったので、…

東野圭吾『容疑者Xの献身』

昨日は、明け方の四時頃まで、時間を忘れてを読んでいた。そして、「石神さんはネ申だ」という結論に至った。。 この作品は、天才物理学者・湯川学こと「ガリレオ先生」の活躍を描いたシリーズものの一作です。いきなりこの作品から読んでも違和感なく世界に…

粕谷知世『ひなのころ』

お雛様や、お人形とも話せた幼い日々、病弱な弟を抱える家族の中で、ひとり孤独を感じていた頃、将来が見えず惑い苛立った思春期。少女・風美にめぐる季節を切り取り、誰もが、心のなかに大事に持っている“あのころ”の物語を描き出す。期待の新鋭、初の文庫…

円城塔『オブ・ザ・ベースボール』

ファウルズ。とある町の名前でこの町の名前。人が降ることで有名で、地理の試験に出ることは決してないが、誰もがみんな知っている。人が降るっていうのは人が降るってことで、つまり文字通り人が降る。降るなら雨か雪、せいぜいがところ蛙程度にしておいて…

J・P・マッケボイ『マンガ 量子論入門』

正直いって、ほとんど理解できなかった。うーん、量子論に関する歴史をずらずらと並べられても、文章を読むのも容易でないし、頭に入ってこないのだ。まあ、それは私の処理能力がついていけないだけで、自分が悪い部分もあるのでしょう。 あと、この本は翻訳…

山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』

19歳のオレと39歳のユリ。恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた。「思わず嫉妬したくなる程の才能」と選考委員に絶賛された、せつなさ 100%の恋愛小説。第四一回文藝賞受賞作。 ずっとずっと読みたかった本。一日で読み終えました。描写をしない…

星里もちる『りびんぐゲーム』

続きが気になるドタバタ物語。ナミフクDMに入社二年目の不破雷蔵くん。ひょんなことから、自宅が会社になり…。十五歳の女の子と同居することにもなります。漫画こそ細部が命だと思うけど、コマ割りから物語の運び方まで随所に無駄がまったくなく、読むほう…

機本伸司『神様のパズル』

第三回小松左京賞受賞作、つまりはSF作品ということになります。 留年寸前の主人公は担当教授から、不登校の天才飛び級少女・穂瑞沙羅華をゼミに参加させるようにと命じられた。苦し紛れに「宇宙は作ることができるのか」という疑問を彼女にぶつけたところ…

古野まほろ『探偵小説のためのエチュード「水剋火」』

返品中に見つけて買った本。この作品は知らなんだが、古野さんといえば「天帝」シリーズの人やん、と今回初挑戦の私が言っても仕方がないか。 本格ってこんなところまでいってるの――というのが私の感想です。文章といい会話といいちょっとついていけません。…

水田美意子『殺人ピエロの孤島同窓会』

十二歳のときに書き上げた作品だそうで、明日はテストだというのに読むのを止められなかった。髪を切るのも、忘れた。 本土から1500キロ離れた東硫黄島。火山の噴火により孤島となった島で久しぶりに同窓会が開かれることになった。ところが、殺人ピエロの登…

阿部和重『アメリカの夜』

映画学校を卒業し、アルバイト生活を続ける中山唯生。芸術を志す多くの若者と同じく、彼も自分がより「特別な存在」でありたいと願っていた。そのために唯生はひたすら体を鍛え、思索にふける。閉塞感を強めるこの社会の中で本当に目指すべき存在とは何か?新…

近田春夫『その意味は 考えるヒット4』

週刊文春連載の音楽評論集で2000年当時の楽曲を、含蓄のある文章でしたためていますが、さらっと読めちゃう潔さ。 うーむ、ばりばり、人を納得させる力量があり、混沌とするJ-POP業界をこれほどまでに公平かつ的確に判断できる人物はなかなかいないと思いま…

竹本泉『パイナップルみたい』

表紙を見たときの衝撃は、「なんだこれ」の一言に集約されます。眼鏡っ子にパイナップルって……。でも、これが初恋純情物語だったりするのですね。 恋ってパイナップルみたいという趣旨は、我々凡人にとっては理解不能ですが、熟れた果実を具体化したらパイナ…

木下半太『悪夢の観覧車』

ゴールデンウィークの行楽地で、手品が趣味のチンピラ・大二郎が、大観覧車をジャックした。スイッチひとつで、観覧車を爆破するという。目的は、ワケありの美人医師・ニーナの身代金6億円。警察に声明文まで発表した、白昼堂々の公開誘拐だ。死角ゼロの観覧…

山川健一『「書ける」人になるブログ文章教室』

欧米のブログがジャーナリズムを変えつつある一方、日本のブログはタダの日記にすぎないと言う人がいる。しかし、じつは日記こそ自己表現の原点であり、豊穣なる日本文学の母胎と言えるのではないか。ブログに何をどう書き、いかに「作品」を生み出すか。小…

森博嗣『探偵伯爵と僕』

もう少しで夏休み。新太は公園で、真っ黒な服を着た不思議なおじさんと話をする。それが、ちょっと変わった探偵伯爵との出逢いだった。夏祭りの日、親友のハリィが行方不明になり、その数日後、また友達がさらわれた。新太にも忍び寄る犯人。残されたトラン…