2008-01-01から1年間の記事一覧

近田春夫『その意味は 考えるヒット4』

週刊文春連載の音楽評論集で2000年当時の楽曲を、含蓄のある文章でしたためていますが、さらっと読めちゃう潔さ。 うーむ、ばりばり、人を納得させる力量があり、混沌とするJ-POP業界をこれほどまでに公平かつ的確に判断できる人物はなかなかいないと思いま…

竹本泉『パイナップルみたい』

表紙を見たときの衝撃は、「なんだこれ」の一言に集約されます。眼鏡っ子にパイナップルって……。でも、これが初恋純情物語だったりするのですね。 恋ってパイナップルみたいという趣旨は、我々凡人にとっては理解不能ですが、熟れた果実を具体化したらパイナ…

「青春デンデケデケデケ」

60年代、ベンチャーズに影響を受けた高校生たちの姿を描いたノスタルジックな学園青春ドラマ。芦原すなおの直木賞受賞作を原作に、大林ワールドが展開。 芦原すなお原作、大林宣彦監督の映画。こんな言葉を軽々しく使いたくないですが名作です。 若き日の浅…

木下半太『悪夢の観覧車』

ゴールデンウィークの行楽地で、手品が趣味のチンピラ・大二郎が、大観覧車をジャックした。スイッチひとつで、観覧車を爆破するという。目的は、ワケありの美人医師・ニーナの身代金6億円。警察に声明文まで発表した、白昼堂々の公開誘拐だ。死角ゼロの観覧…

山川健一『「書ける」人になるブログ文章教室』

欧米のブログがジャーナリズムを変えつつある一方、日本のブログはタダの日記にすぎないと言う人がいる。しかし、じつは日記こそ自己表現の原点であり、豊穣なる日本文学の母胎と言えるのではないか。ブログに何をどう書き、いかに「作品」を生み出すか。小…

森博嗣『探偵伯爵と僕』

もう少しで夏休み。新太は公園で、真っ黒な服を着た不思議なおじさんと話をする。それが、ちょっと変わった探偵伯爵との出逢いだった。夏祭りの日、親友のハリィが行方不明になり、その数日後、また友達がさらわれた。新太にも忍び寄る犯人。残されたトラン…

エマニュエル・ボーヴ『きみのいもうと』

どん底の貧乏生活を送っていた「ぼく」も、今では悠々自適な未亡人のツバメ。しかし、惨めな旧友とその妹に出会い同情と優越感を覚えた瞬間、彼の心の平安は音を立てて崩れ始める…。なぜ、ぼくは彼女を誘惑してしまったのか?素寒貧で、せつなくて、ちょっと…

角田光代『予定日はジミー・ペイジ』

出産にはいくつものストーリーがあり、悩みと笑い、迷いと決定が詰まっているのだろう。だめ妊婦、ばんざい! 天才ロックギタリストの誕生日に母親になる予定の「私」をめぐる、切ないマタニティ日記。 前に本屋で見たときは、エッセイかと思い違いをしていた…

フローベール『紋切型辞典』

ここに編まれたおよそ1000の項目は、衣服、飲食物や動植物に関するもの、礼儀作法の規範、身体と病気についての俗説、芸術家、歴史的人物の逸話と彼らの評価など、多岐にわたる。フローベール(1821-80)はその記述に様々な手法を駆使して、当時流布していた…

現代のエンターテイメント小説

【警告】無駄に長く退屈、かつ、ひどい内容ですので、気を付けてください。 いま、私がバイトしてる書店のレジ前では、本屋大賞受賞を記念してかどうかは知らないけど、伊坂幸太郎の著作群が平積みしてあったりするわけです。 んで、店長が『ゴールデン・ス…

吉本隆明『日本語のゆくえ』

日本語における芸術的価値とは何か。現在著者が最も関心を集中している課題を、母校・東工大で「芸術言語論」講義として発表。神話時代の歌謡から近代の小説までを題材に論じ、最後に「いまの若い人たちの詩」を読む。そこで現代に感じたものは"塗りつぶされ…

吉田秋生『河よりも長くゆるやかに』

途中で止まらなくなるくらいの面白さでした。コマに無駄がなく、読みとばしは厳禁なのだけど、すごく濃密で、時にとんでもない笑いを生みだしてくれる漫画だった。二十数年前の男子校を舞台にした、〈女とみればヤリたがり、大麻ときけば吸いたがるニッポン…

ポール・ニザン『アデンアラビア』

大学の図書館で、取り寄せた本書は、黄ばみや日焼けもひどく、多くの人に読まれてきたのだなぁという感慨深し。 〈ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい〉という超有名で印象的な出だしから、がしっと捉まれ…

リュミドラ・ウリツカヤ『ソーネチカ』

本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカは、1930年代にフランスから帰国した反体制的な芸術家ロベルトに見初められ、結婚する。当局の監視の下で流刑地を移動しながら、貧しくも幸せな生活を送る夫婦。一人娘が大きくなり、ヤーシャという美少女と友達になっ…

金井美恵子『小説論 読まれなくなった小説のために』

大学読書人大賞はA・C・クラーク『幼年期の終わり』(光文社古典新訳文庫)に決定致しました。ノミネート作を見たときは一瞬驚いたけど、蓋を開けてみると穏当な結果で、何も申すこともありますまい。金井美恵子『小説論 読まれなくなった小説のために』(朝日…

川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』

ニシノくん、幸彦、西野君、ユキヒコ…。姿よしセックスよし。女には一も二もなく優しく、懲りることを知らない。だけど最後には必ず去られてしまう。とめどないこの世に真実の愛を探してさまよった、男一匹ニシノユキヒコの恋とかなしみの道行きを、交情あっ…

墨谷渉『パワー系181』

第31回すばる文学賞の受賞作。最後まで読ませる筆力はある。文芸評論家の渡部直己が山田詠美のデビュー作『ベットタイムアイズ』を〈色の黒さは百難隠す〉と、つまり、主人公の対象が日本人ではなく黒人であったために成立した物語だと評していたが、それに…

ジッタリンジン「The Very Best Collection」

八十年代後半生まれのいわゆる「ゆとり世代」の私が、好きな「80's、90's」ソングを挙げるなんて無茶もいいところなんですが、なりふり構わず挙げてしまえ。ジッタリンジンです。 歌詞が最高!「アニー」という曲では、ひとめぼれを歌っている。リズムが気持…

米原万里『不実な美女か貞淑な醜女か』

同時通訳者の頭の中って、一体どうなっているんだろう?異文化の摩擦点である同時通訳の現場は緊張に次ぐ緊張の連続。思わぬ事態が出来する。いかにピンチを切り抜け、とっさの機転をきかせるか。日本のロシア語通訳では史上最強と謳われる著者が、失敗談、珍…

永井豪『デビルマン』

全五巻で、一巻から三巻まで読み終えましたが、ストーリーが荒唐無稽すぎるのはマンガの性だし、「こんなのありえなーい」なんてコメントするのはナンセンスだと思うので、取り敢えず「すごい!」と記しておきます。特に三巻は白眉。いきなり過去の様々な時…

パオロ・マッツァリーノ『つっこみ力』

「つっこみ力? ふざけたタイトルだなあ」とお思いになりましたか? そう、本書はマジメにふざけた一冊なんです。正しいだけの議論や正しいだけの主張が書いてある本なんて、読む気もうせますよね。本書では、世の中をおもしろくする力としての「つっこみ力…

桜庭一樹『青年のための読書クラブ』

東京・山の手の伝統あるお嬢様学校、聖マリアナ学園。校内の異端者(アウトロー)だけが集う「読書クラブ」には、長きにわたって語り継がれる秘密の“クラブ誌”があった。そこには学園史上抹消された数々の珍事件が、名もない女生徒たちによって脈々と記録され…

デイヴィッド・アーモンド『クレイ』

これが本当に児童文学?デイヴィッド・アーモンド『クレイ』(河出書房新社)を読み終えました。 重くて深いなあ。子供の頃、この本を読んでたら、どーなってたんだろうと思わずにはいられない作品でした。 フェリングに越してきた少年スティーブンのいうまま…

GO!GO!7188「ベスト オブ ゴーゴー」

いまでは、ポップな感じになってしまったが、ロックな感じの頃のゴーゴーは、結構好きだった。 シンプルなリズム隊に加わるユウの力強い歌声。初期の骨太なサウンドに、当時はめっちゃ魅了されたものでした。Simple is the best. やね。 アッコの歌詞がとて…

津村記久子『カソウスキの行方』

郊外の倉庫管理部門に左遷された独身女性・イリエ(28歳)は日々のやりきれなさから逃れるため、同僚の独身男性・森川を好きになったと仮想してみることに…。第138回芥川賞候補作。 タイトルの、カソウスキって何? 花の名前かと思ってたら、違いました。そん…

LED ZEPPELIN「LED ZEPPELIN IV」

名盤中の名盤を聴きました。軽音サークルに入っていながら、音楽をほとんど聞いていない私。知らないとは罪ですね。 「BLACK DOG」という曲から始まります。ボーカルの高い声と掛け合いをするリズミカルなギター。さすがジミー・ペイジ。音がきれいだわ。と…

斎藤美奈子『文学的商品学』

本屋で以前、立ち読みしていたのですが、文庫になったので購入しました。もう、ステキ。読者の視点から容赦なく精緻に語る斎藤節は本書でも健在です。青春小説、風俗小説、ホテル小説など、各ジャンルの個々の作品の具体的な「モノ」の描写から、商品である…

パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』

読んでる途中の本が、他にもあるのに一気通読。面白いを通り越して、痛快なまでに楽しかった。社会問題(少年犯罪、小子高齢化、労働問題など)を鮮やかに軽やかに紐解いていく手腕は、なんともまぁ頼もしいものです。 論理的なだけではなく、面白いのです。そ…

Talking Heads「Remain in Light」

「Born Under Punches」という曲から始まる。全体的にリズムは打ち込み風味の反復を基調としています。そこに所々、意表をつくようなリフが入る。ジャンルは何なんでしょう。 「The Great Curve」はボンゴが入り、陽気なのにクールな曲に仕上がっています。…

連続テレビ小説

NHKの連続テレビ小説。ごくたまにチャンネルを変えて、「あ、やってる」と見たりするのだが、NHK側に決まったテーマがあるのか、毎年内容が似たりよったりしているような気がします。主人公は女性ですよね。結構長いスパンでの主人公の成長が描かれる…